こんにちわ。名古屋市中区新栄の歯科医院 みさとデンタルクリニックです。今日は、歯の神経(歯髄)まで進行してしまったむし歯のはなしです。
C3:むし歯の菌が歯の神経(歯髄)に感染した状態
エナメル質という硬い組織からはじまったむし歯が、象牙質という硬組織に進行しさらに歯髄とよばれている歯の神経が入っている部位にまで進行した状態です。むし歯が歯の神経に感染した病態を歯髄炎といいます。
この頃になるとはっきりと歯が痛いという自覚症状が出てきます。「歯が痛くて眠れませんでした。」 「寝る頃になると歯が痛みます。」夜になると歯が痛いというのが歯髄炎の一つの特徴です。
この理由として、夜は副交感神経が優位になることにあります。副交感神経が優位になると血管が広がり血流が多くなります。膨張した血管によって歯の神経が圧迫されて歯がズキズキ痛むのです。
C3:むし歯菌に感染してしまった歯の神経を取ります
歯医者では「むし歯が深いので神経を抜きましょう」と説明されます。神経を「抜く」という表現は一般の方にはかなり違和感があるようで、一通り説明したあと患者さんから「歯を抜くんですか?」と聞き返されることがあります。感染した歯の神経(歯髄)を歯から取り除く処置を『抜髄』といいます。読んで字のごとく歯髄を抜く処置です。ここから歯医者は神経を抜くという表現を使っています。
さて、この抜髄という処置にはもちろん麻酔を使用します。やっかいなことに痛みがひどい時には、麻酔が効きにくいのです。もともと下顎の奥歯を支える骨は厚く、麻酔薬が浸透しにくいのですが、痛い時にはさらに麻酔が効きにくくなります。「昔、歯医者で麻酔が効かなくて辛い思いをした」と聞くことがありますが、こういった歯の状況だったのかもしれません。そして前もって歯が痛くなることがわかっている方はいるはずもなく、歯髄炎の方は急に歯医者を探して飛び込むことになると思います。歯科医院は予約制が多いなか待ち時間が長くなると思います。さんざん待たされた挙げ句に、麻酔が効かない・・・最悪なシチュエーションですよね。むし歯がC3の一歩手前になるまで自覚症状がないことがほとんどです。少しでも自覚症状がある方はすぐに歯医者さんに診てもらって下さいね。
そして抜髄という処置はとてもデリケートな処置です。神経が入っている歯髄腔という空間には神経が健康であるうちは細菌はいません。身体の内部の組織です。C3で歯髄に感染がおこり、抜髄処置で歯髄腔が開放されるとそこには細菌が入り込みます。歯髄腔から根管とよばれる神経が入っていた組織にいかに細菌を入れないか、残さないかが大変重要となります。でもみなさんご存知のように口の中は細菌だらけです。そんな口の中に生えている歯の中に細菌を入れないというのは至難の業です。
そこで神経をとる治療に必須なのはラバーダムというシステムです。ラバーダムを用いて、清潔な部位と不潔な部位を仕切るのです。TVの医療ドラマで手術シーンに出てくるお腹にかける青いシートと同じ役割をします。こうすることで口の中にいる細菌が開放された歯髄腔や根管に入るのを防ぎます。(それでも細菌がゼロになるわけではありませんが)ラバーダムを付けないで根の中の掃除をしてもきれいにしたそばから汚染されるということになります。根管が汚染された状態にしておくと、さらにむし歯が進行します。患者さんもラバーダムを使用することによって、舌の位置を押さえつけられたり、頬を引っ張られたりすることがないので見た目より楽に治療を受けて頂けると思います。
神経を除去した根管は空洞になります。空洞をそのままにしておくと、入り込んだ細菌が増殖しますので、根管充填という処置を行います。空間を封鎖して細菌を埋葬し、細菌の活動を止めるのです。
その後は、失われてしまった歯の形を回復する治療になります。C3まで進行してしまった場合、本来の歯の形は大きく失われていることがほとんどです。その場合、被せものを製作し被せることになります。
何回も繰り返しますが、歯は治療しても元の健康な状態に戻るわけではありません。歯の神経を失ってしまった歯は歯の寿命の最終段階に来ています。その歯を再度むし歯にしてしまう(二次カリエス)と次は再治療が難しくなり抜歯になることも考えられます。悪い流れを断ち切るために、むし歯の進行と治療法②でもお話したように、二次カリエスのリスクを下げる被せものを選択する意味があるのかなと思います。
そういえば昔、神経抜いて銀歯を被せた歯があるなという方は銀歯のふちからはじまったむし歯が、なかで進んでいる可能性があります。再度の治療はできないので抜歯ですとなる前にぜひ一度ご相談下さい。